#ライフスタイル

海辺を歩きながら「自分の真ん中」に戻り、心の声を聴く
Partiリーダーズ徳沢理絵さん SPECIALインタビュー

本誌体験取材やイベントなどでも活躍!
理絵さんの知られざるストーリー


今年春、理絵さんが全力を捧げて活動してきたシンガポール日本人学校中学部の特別支援級設置が実現します。
優しく、聡明で、内面から溢れ出す柔らかな光に包まれているような理絵さん。
けれどその輝きは、人知れず葛藤の日々を送るなかで、本心と向き合い、自分をバージョンアップさせ続けてきた賜物。
理絵さんの生き様に、勇気をもらう人がたくさんいるはず!




自分の真ん中に戻る時間を作る


海辺の町、神奈川県茅ケ崎市の住まいを離れ、7年前にシンガポールにやって来た理絵さん。当地でも海のそばに暮らしています。

「毎朝のルーティンとして、イーストコーストのビーチを散歩します。朝の太陽、水、大地、花、空、雲を眺めなら、自分の真ん中に戻る時間を意図的に作るようにしているんです。シンガポールに来たとき、自分の心がやりたいことを大切にしようと決めました。かつては仕事をしながら育児をし、次女には成長の遅れもあって、朝は一杯の水を飲む余裕さえないときも。子どもの残り物を立ったまま食べる私に『君も座って食べなよ』と夫が優しい言葉をかけてくれても、ただ苛立つばかりでした」

彼女の朝を変えたのは、シンガポールに来たからではありません。ある年のお正月に起きた「お節事件」がきっかけでした。

「新しい年のお祝いの席で、子どもの残り物を前に出されたときに、すごくショックだったんです。でもそこで、あ!私は無意識のうちに自分で自分に同じことをしている!と気づきました。
私は私と両想いになろう

それからは心の声を聴きながら、誰よりも自分を丁寧に扱おう、と決めました。例えば朝起きたら”今、何が飲みたい?”と自分に聞く。好きなお茶を淹れて五感で味わいながら飲み、その幸せをじっくり味わう。たった5分でできる小さなことだけど、これだけでハッピー度が大きく変わります」






シンガポールで人とつながる


「日本でイベントプロデューサーをやっていたこともあって、こちらでも様々なイベントを企画してきました。
自分がワクワクすることは何? そこで自分が役に立てることは何だろう?

といつも考えていました」

理絵さんの好奇心は底無し。向学心も強く、シンガポールでWEB解析士の資格を取得した際のある出会いが大きな転機をもたらしました。

「WEB解析士の同期に、シンガポール国立大学(NUS)で客員教授も務める森和孝弁護士がいらっしゃいました。学校の話題になったときに『次女が今、日本人小学校の支援級に通っているのだけど、ここの中学校には支援級がありません。5、6年生で支援級に在籍している児童は中学部に入学できないので、4年生で在籍か退級かを選ばなくてはいけないし、あなたは支援級にいるから入学できませんと言われるのは、子どもの心にとても大きなダメージがあります」と話したところ、森弁護士が『これは絶対に何とかしないと!』と言ってくださったんです。それから支援級設置に向けて実際に動き出してくれました」

この動きの中で、これまで理絵さんがイベントで出会ってきた人たちが次々と強力なサポーターとなって、大きなムーヴメントになります。もともと支援級の設置を訴えてきたEis幼稚園の峯村敏弘園長、日本人会クリニックの心療内科医である毛利由佳先生など頼もしい味方が集いました。




困難なときは、根底にある愛を思い出す


理絵さんの次女は、生まれつき心臓に穴が3つあり、他の臓器にも問題を抱えていました。赤ちゃんのときは24時間、20分毎にケアが必要で、理絵さんはほとんど睡眠を取れない時期もあったとか。

「次女は世界に14人しか症例のない遺伝子疾患でした。病院の先生から人体の構造について説明を受けるたびに、今こうして生きていることが奇跡なんだと自分の体への強烈な感謝が溢れました。歩けること、話せること。
当たり前のことに感謝する

次女からこのことを本当の意味で学びました」

理絵さんは支援級に向けた活動をするなかで、同じ悩みを抱える保護者の声に耳を傾けるにつけ、設立への想いを強くしていったそう。けれど、日本の関係省庁と現地校それぞれの立場があり、運営のややこしさゆえに一度は座礁しかけたこともあったといいます。

「子どもたちには『あなたは何にだってなれる可能性があるんだよ』と言ってあげられる世界にしたい。進路の選択肢のひとつに、海外であっても日本人中学校に支援級を! だけど、私はただのお母さんで、凄い経歴がある訳でもない。板挟みで苦しくなったり、私に務まるのかな……と不安になることも。そんなとき、自分の中にいる師匠のような温かい存在が言うんです。
本当にしたかったことを思い浮かべてごらん

そう心の声と対話します。この対話こそ、大変なときに自分が自分に戻る私の術です」




心をオープンにして飛び込んでみる


昨年春、大きな好転のチャンスが到来します。人の縁が繋がって、首相官邸で「海外日本人学校の現状」を伝える機会を理絵さんは得たのです。

「コロナのなか、国を跨いで話を進めるのは大変でしたが、必死に作った資料とともに勇気を出して帰国しました。そこで問題を重く受け止め、翌月にはシンガポールまで来てくださった森まさこ内閣総理大臣補佐官と、zoom会談を繰り返してくださった参議院議員の自見はなこ先生には、とくにご尽力いただきました。本当にたくさんの方が想いをかけてくださり、繊細な織物のように全てが繋がって、誰一人欠けてもダメだったと思います。その全ての方に本当に感謝しています」

こうして在外教育施設における教育の振興に関する法律が成立し、ついにシンガポール日本人学校中学部に特別支援級が設置されることになりました。

「中学校では新しく教室を作ってくれたり、素敵な学級名を考えてくれたりと、本当に有難いことばかり。娘をまるごと受け止めて楽しい学校生活を支えてくれた小学校の先生方には感謝の言葉が尽きません」

障がいのある子どもたちのアートをNFT化して継続的な自立を目指すなど、新たな取り組みを始めた理絵さん。一方で、NUSリー・クアンユー公共政策大学院のアジア地政学プログラムに英語に自信がなくても飛び込むなど、自分を高める努力を惜しまず、興味のあることに真っ直ぐに行動する姿は天晴れです。

そんな理絵さんから海外暮らしを頑張るみなさんに、最後にひと言!

「日常に追われてワクワクから遠ざかっているなら、
小さなことでも自分の心が喜ぶ時間をプレゼントしてあげて

心をオープンにして、シンガポールでの出会いを楽しんでくださいね」



徳沢理絵さん

WEBメディアの企画広告営業・ディレクターを経て、2016年よりシンガポールに移住。
現在はイベントMC・プロデューサー/マーケティング・PRなど多岐にわたり活動中。
シンガポールでは食、美容、心理学など幅広い分野でのイベントを主宰し、延べ5000名以上を動員する。
直近ではシンガポールで初となる外務省国際女性会議WAW!公式サイドイベント「Singapore Women’s Empowerment Forum 2023」を主宰。

FB: 徳沢理絵
Instagram: and.rie_luv



理絵さんの愛する娘さんたち。長女はいつも妹の成長を願い、支援級設置の活動も心から応援し、理絵さんを支えてくれたとか。




2022年冬、シンガポールの現地校、日本人学校、障がいのある子どもたちとのコラボアート展が森まさこ先生の発案で実現。








海外の日本人学校における特別支援級

シンガポールの日本人学校小学部は世界的大規模校で約1,500名。
そのうち約20名が発達障害を抱えています。
中学部(生徒数約500名)に特別支援学級がないため、小学部を卒業したら、父親がシンガポールに残り、障害を抱えたお子さんと母親だけで本帰国するケースも多々あったといいます。
今回の支援級設置で、義務教育の期間、シンガポールであっても発達障害を抱える児童がきちんと中学部へ通えるようになったのです。

そもそも小学部の支援級も最初は保護者ボランティアからスタートし、たくさんの先人の“願い”と“行動”の結晶で、今の形になったそう。

世界の日本人学校には支援級のない学校がまだたくさんあり、保護者から設置希望の声が上がっています。
法律の改正もされた今、ひとつでも多くの学校に支援級が設置され、子どもたちの選択肢が増えることを願います。

※上記の生徒数は2022年のものです




※2023年4月1日時点の情報です。

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