前回のポイント(仲介手数料①)
● シンガポールで不動産取引を規制する法律はEstate Agent Act
● その取引を監督する官庁はCEA(Council for Estate Agencies)
● シンガポールには不動産仲介手数料は法律で決まっておらずケースにより異なる
● 現時点では家賃が一定金額以上の場合には借り手は不動産仲介手数料を支払わなくてもよいケースが多い
● 家賃があまり高くない場合や賃貸借期間が短い場合には家賃の1か月相当分の不動産仲介手数料の支払いを求められることがある
今回のテーマも仲介手数料
今回は佐藤さんが不動産業者の山田さんに仲介手数料について聞きます。
佐:そうすると家賃があまり高くない場合や、短期の場合には不動産業者は「借り手の人」と「貸し手の人」の両方から手数料を取ることもあるのでしょうか?
山:いえいえ。日本の場合では仲介手数料の額で制限しており、借り手と貸主、あるいは買い手と売り手の両方から仲介手数料を取って良いのですが、シンガポールでは固く禁じられています。日本の場合は、賃貸の場合、仲介手数料は家賃の1か月分を上限としておりますが、なかなかそれでは経営が厳しいため家主さんからは広告料や企画料というような別な名目で費用を徴収しております。ただ
シンガポールはいかなる名目であろうと貸し手と借り手の両方から同一不動産業者(個人)が手数料を取得することは禁じられています。
佐:今、個人の不動産業者さんとおっしゃられましたが、どういうことでしょうか? 会社であればよいのでしょうか?
山:シンガポールではほとんどの不動産業者さんが完全歩合でいわゆる自営業者のようにして仕事を行っています。この独立した不動産業者さんを束ねて運営しており、その事務手数料をそれぞれの不動産業者さんから徴収して運営している会社がほとんどです。そのため
同じ会社の中で貸主の不動産業者さんと借主の不動産業者さんが異なることがありますが、その手数料請求書は同じ会社から発行されることになり、貸し手と借り手の両方から手数料をとっているように見えることがありますが、このような場合は同じ業者でなされます。
佐:なるほど、いろいろややこしいのですね。
山:もっと言いますと、本当は家主さんの不動産業者さんが手数料を分けてくれるのに、分けてもらうと賃料の半分の手数料しか貰えなくなるため、敢えて借主の人に1か月分の手数料を請求して、家主側不動産業者から貰わずに取引をまとめようとするような人もいます。
佐:そうすると家主側の不動産業者さんもテナントさんから手数料をとれるような不動産業者さんと取引をした方がより多くの手数料を取れるので、そちらを優先するということも起こる訳ですね。
山:その通りです。そのためなるべく有利に物件情報を集めて、有利な条件を取ろうとすれば、借り手も手数料を払うのでそれなりに有利な条件を引き出すことも可能ですが、
お願いする不動産業者さんがどのくらいきちんと仕事をしてくれるかということがポイントです。
佐:そうですね、どのくらいちゃんと仕事をしてくれるか分からない人に最初から手数料の支払いを約束はできないですよね。
今回のポイント
ポイント1
● シンガポールでは賃貸も売買も同じ不動産業者が借り手と貸し手、買い主と売り主の両方からいかなる名目でも手数料を取ることを法律で禁止している
ポイント2
● ただし、同じ会社でも資格を持った担当不動産業者が異なる場合はこの限りではない
ポイント3
● 本来、貸し手側の不動産業者から手数料を、借り手側の不動産業者が取れるような場合でも、敢えて貸し手側の不動産業者から取らずに借り手側に支払をお願いすることにより物件情報を多く、また条件を有利に交渉することができるときもある
ポイント4
● 借り手側の不動産業者に手数料を支払う場合にはその業者の信用、取引実績などをよく調べた方がよい
教えてくれたのはこんな人
高野 徹
82年東急不動産入社。93年から駐在、不動産仲介、エアコン保守を手がける。
01年東急不動産より会社譲渡を受ける。
また現在、野村不動産から資本を50%受け入れ野村不動産グループに。
その他、日本のリログループ、リログループの100%出資の米国リダック社とも業務提携(日本、米国、ヨーロッパ不動産賃貸)。宅地建物取引主任者、シンガポール不動産仲介業有資格。
お問い合わせは、takano@tokio.com.sgまで
www.tokioproperty.com.sg