#mental care

【心ひも解くヒント】
自閉症スペクトラム症(ASD)とは?

アスペルガーはもう存在しない?
偏見のないインクルーシブで温かい社会へ

「自閉症スペクトラム症(ASD)」という言葉を聞いたことがある方は、多いと思います。これは生まれつきの行動や思考の特性で、発達障害のひとつです。スペクトラムとは「あいまいな境界を持ちながら、虹のように連続している」という意味。その程度は個人によって、強⇔弱の中のどこかに属しているという考えです。

ASDの理解は複雑で、到底一言では説明できるようなものではなく、これまで多くの研究と議論が繰り広げられてきたにもかかわらず、いまだ統一した見解が得られていない部分も多いため、誤解や流動的な見解もあります。最近の調査では、50人に1人の割合で診断されており、男性が女性の3~4倍いるとされています。

その移り変わる認識のなかでも、今回はアメリカ精神医学会の精神疾患の診断基準の最新版DSM-5をベースにお話します。

第4版までは、ASDは「広汎性発達障害」に分類されており、その下に「アスペルガー障害」、「自閉性障害」などに分かれていました。しかし、第5版では、ASDは「コミュニケーション(対人関係)の障害」と「興味や行動への強いこだわり」という2つの特徴を併せ持つコンディションとされます。 どちらか1つだけの場合には、ASDとは診断されず、それぞれの特徴に○項目以上該当する場合に、「a)コミュニケーション(対人関係)の障害」、あるいは、「b)興味や行動への強いこだわり」と診断されます。 a)は、主に社会性やコミュニケーションに困難さがあり、仲間との関係性の構築や、興味や関心の共有が苦手で、さらに情緒的相互性の欠如があるタイプ。b)は、固執的で反復的な行動や興味、関心を持つタイプです。

以前までアスペルガー症候群と呼んでいたのは、a)に当てはまります。診断をする際には、医師や心理士による問診・面接・行動観察・検査を要します。その中で知能検査も実施することが一般的ですが、一貫して言語性より非言語性尺度の方が高いことが報告されている一方で、知的に問題のない高機能自閉症の場合には、そこにほぼ有意な差異がないことも分かっています。

対応としては、一人ひとりの特性を検査によって理解したあとは、それぞれに合わせた「療育」や「心理療法」をすることになります。それにより、日常生活の支障を少なくすることを目標としています。




This Month’s Hint(今月のヒント)

ASDは生まれつきの脳の機能の異常で、正確な原因は分かっていませんが、「育て方」「しつけの問題」ではないことは分かっています。また、病気というよりも特性とされ、完治をするような類のものではありません。




教えてくれたのはこんな人

山形千尋
BeeYrOwn心理士。(応用心理学修士・カウンセリング学修士)
オーストラリア・カウンセリング協会会員、シンガポール公認心理士。

BeeYrOwn Psychologist & Therapist
308 Telok Kurau Rd Vibes @ East Coast
☎ 9665-4572
Email: beeyrown@aim.com
http://beeyrown.blogspot.com
診療日:火、水、土(完全予約制)

連載 こちらもおすすめ