#mental care

【心ひも解くヒント】
心理的リアクタンス

自由奪還?
なぜ、そこまでしてマスクを拒むのか?

COVID-19の影響はまだまだ継続中で、きっと皆さんもうんざりしていますよね。
感染拡大を予防するための三密回避や、マスク着用は世界中で常識になりました。とくに当地ではこのような試みに強制執行力があるために、有無を言わせず従わざるを得ませんが、それでも断固としてマスク拒否をし、その様子をSNSにあげられ巷を賑わせる人たちがいます。


5月には感染拡大防止措置に違反とし、39歳の白人男性、そして元海軍オフィサーの53歳の中華系シンガポール人女性がマスク着用拒否で逮捕されました。興味深いのは、このような人は、指摘をされたときに「あ、すみません!」とその場だけでも従っていれば、そこまでの大きな問題にならないところを、敢えて事を大きくするような挑発的な態度を取り、その結果(悪い意味で)有名になり、中傷され、果ては罰金、懲罰が与えられようとも、今後も繰り返しその行動を続けるところです。一体どういうことなのでしょうか?


ルールに従うかどうかという観点では、個人の収入、政治的信念、性別に関連があることも分かっていますが、シンガポールのような国において、上記のような頑ななまでの抵抗はその範囲を超えています。心理学の観点からは、それはA) リスクに対する考え方とB)リスクのある行動に関しての傾向、そして個人の心理的リアクタンス度がとくに関連していると考えられます。


心理的リアクタンス度とは、個人が何かの規制をかけられた際に、自分の自由や行動の選択肢が制限されたとどれだけ感じるかの度合いです。それが高い個人は、決まり事や変更に対しても、「強制された」とフラストレーションや怒りを感じやすく、「こういう状況だから仕方ないか」とは考えず、敢えてそれに反発したくなり、自由回復のための行動を起こします。その結果、自分が損をしたり、面倒くさいことになることには考慮できませんし、周りの馬鹿で愚かな人とは異なり、むしろ正しいことをしたと考えている場合さえあります。


身近な例では「いい加減、勉強しなさい」と言われた途端に、やる気が失せ「今、やろうと思っていたのに、言われたからもうしない」などとも同じです。




This Month’s Hint(今月のヒント)

このようなタイプの人にマスクを着用させるために、
1)怒鳴って従わせること、
2)理論で説得することも、
不安の強い人かシャイな人以外にはほぼ無効ということも明らかになっています。敢えて効果があり得るのは、なぜマスクを着用しないのかをそこに至った感情や原因を共感しながら理解することから忍耐強く始める方法ですが、しかし、他人に対してそこまでのことをしようという人は稀ですよね。よって、正解があるとすれば「そのような人からは離れておく」という結論になります。
※この記事は、マスク着用の是非について問うもの、または判断をするものではありません




教えてくれたのはこんな人

山形千尋
BeeYrOwn 心理士。シンガポール心理学会公認心理士。
オーストラリア・カウンセリング協会員。
(応用心理学修士、教育カウンセリング学士)

BeeYrOwn Psychologist & Counsellor
308 Telok Kurau Rd Vibes @ East Coast
☎ 9665-4572
Email: beeyrown@aim.com
http://beeyrown.blogspot.com
診療日:火、水、土(完全予約制)

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