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【シンガポールNOW】
女子ゴルフ世界選手権観戦記
悪天候に負けず古江3位、渋野らも奮闘

-Singapore-
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女子ゴルフ世界選手権観戦記
悪天候に負けず古江3位、渋野らも奮闘

シンガポールのセントーサ・ゴルフクラブで3月2~5日、米女子ゴルフのHSBC女子世界選手権が開催された。
「アジアのメジャー」と称される大会に、日本勢は古江彩佳や渋野日向子ら5人が出場した。

4日間の期間中、この時期としては珍しい連日雨の悪天候。
スコールで何度も中断を余儀されただけでなく、雨風の交じる難しいコンディションだったが、選手たちは悪条件に臆せず勇姿を見せた。
大会をリポートする。



安定の古江、3位と好成績


最終ラウンドでティーショットを放つ古江彩佳(LPGA提供)


今大会、日本勢で最も好調だったのは3位でフィニッシュした古江彩佳だ。

米ツアー参戦2年目を迎える22歳。
7バーディー、2ボギーの67で回り、優勝者と3打差の通算14アンダーで大会を終えた。

今大会では安定のショットとパットで攻めのゴルフを見せた。
ミスが出たところも、落ち着いて修正した。
ある解説者は「クラブを自分の手のように操ることができる」選手と太鼓判を押す。
表情を変えず自分の思い描くゴルフを淡々と進めていくプレーは圧巻だった。

大会中は上位をキープしながらも、「できるだけ上位に、自分の順位を変えられたらいいかな」と控えめに意気込みを語った。
最終日、暫定2位でフィニッシュした時にも「危ないところは結構逃げたりした。
まあ、うまく攻めはできたかな」と、これまた控えめに自身のプレーを振り返った。
穏やかな人柄も古江の魅力の一つだ。

ホールアウト後、すぐに始まる囲み取材では、非常に緊迫した空気をまとう選手もいる。
声掛けがためらわれる。
長時間の試合を終えたばかりなのだから、ある意味当然だ。

ただ、古江への取材ではそうした張り詰めた空気感というのが全くない。
どんなスコアであれ、常に穏やかで物腰も柔らかい。
身長153センチメートルの彼女は、隣に立つと本当に小柄に感じる。
最終日には、順位争いの大事な局面でボギー二つをたたき、流れが悪くなるシーンがあった。
それでも本人には悔いはなかった。
「パターは入ってくれた方。そこまで悔いはないかなと」。
逆境の中でも自分にストレスを与えるより、ポジティブな側面を自己評価できるのは彼女の強みかもしれない。

最終ホールではスーパープレーを見せた。
突然のスコールが降り始め、グリーン上は明らかに水がたまっている。
さすがにプレーは中断だろう、と古江のキャディーを含め誰もが思っていた矢先、古江はラインを短めに読んで打った。
約8メートルのバーディーパットは、水の上を泳いでホールイン。
大きな雨音の中に大歓声が沸き起こった。
「マイク(キャディー)に『プレーするの?』と言われて、一瞬止まったが」。
本人には迷いはなかった。その後すぐ、プレーは中断となった。



悔しさにじむ渋野、「耐えるゴルフ」


ティーショットを放つ渋野日向子(LPGA提供)

今年も注目といえば、「しぶこ」こと渋野日向子だ。
日本勢でギャラリーの多さはダントツ。
今大会は通算4アンダーの33位で終えた。
課題と言うショットが思い通りに打てず「いろいろ確認しながらやってはいたが、最後までつかめず。すごくもどかしい気持ちの中でやっていた」と初日を終えて話していた。
最終日までそのショットの課題を引きずった。
「バーディーを取りたい、というのがショットに出てしまったのも多かった。もったいないのも多過ぎた」と最終日には悔しい気持ちを語った。

ショットが池に入る大きなミスも何度かあり、珍しく感情をあらわにする場面も。
上位で戦うことはできなかったが、「しぶこ劇場」は全開だった。
結果を出したいからこそ狙いに行くのだが、とんでもない方向に球が飛んでいく場面がある。
それでも、心折れずにすぐさま精度の高いアプローチやパットでリカバリーする。
観客側もハラハラ・ドキドキなのだが、「これこそ、しぶこ劇場」と渋野を取材してきた記者は声をもらす。
パットはかなりの精度を維持。
オーバーパーなしで大会を乗り切った。

渋野は最終日、「耐えるゴルフも必要。今は攻めのゴルフがあまりできない分、底力を高めていけるように。ちゃんと一球一球、むだにしないようにしている」と言葉を選びながら慎重に話した。
見据えているのはパーオン率の改善だ。
「(パーより2打少ない状態でグリーンに)乗らないとスコアは出ないというのを、改めて感じる。結局はショットだし、5メートル以内のパットだし。やはり大事だなと感じる」と前を見据える。

昨年はこういう時に「自分の気持ちに負けてしまっていた」。
今、そう話せるということは、今年はより一層強い気持ちで臨むことができている証拠だ。



「はい上がろうとする姿」見てもらえたら

渋野は自身のファンにどんな姿を届けたいのか、最後に聞いてみた。
「去年勝てなかったので、どうしても勝ちたい気持ちもある。ただ今はすごく遠いなと。でも、そうやっていろいろ苦戦しながらも上にはい上がろうと、頑張ろうとしている姿を見てもらえるとありがたい」と話した。
「(今日も)トップスタートでとても朝早いのに、すごいたくさんの方が来てくださって。やーありがたいっすね。しみじみ・・・」と笑顔を見せ、周りを和ませることも忘れなかった。

日本勢はこの他、笹生優花が66で回り13アンダーの6位。
畑岡奈紗が9アンダーの11位だった。
西郷真央は16オーバーの65位に終わった。
優勝は高真栄(韓国)で17アンダーと大会連覇を果たし、ツアー通算14勝目を挙げた。



取材後記

HSBC女子世界選手権に出場する日本勢は今年は5人だけだったが、年々上位に食い込んでくる印象だ。
うれしい反面、5選手のプレーを追いかけるのは予想以上の重労働。
広大なゴルフ場をカートなしで走り回る。
今回は連日の長雨に泣かされた。
だが、大会が終わった翌日からはうそのように晴天が続いている。
さては、選手の中に相当の雨女がいたな・・・。


(時事通信社 シンガポール支局)









※2023年3月27日にアップデートされた情報です。


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