#parti editor's travel

【パルティ編集部の個人旅行】
北スペイン Northern Spain

北スペインの美しき街々を巡る

たま~に連載。旅人元編集Uです。
こちらは、2016年の北スペインの旅の記録です。
前任地インドで親しくなったスペイン人のミュージシャン夫婦、ベラとナチョに会いに、美食の都「北スペイン」へ。





アートな都市、ビルバオにて友を待つ

異国に暮らす美点の一つに、外国人同士で仲良くなりやすい点がある。
前任地インドで親しくなったのが、スペイン人のミュージシャン夫婦、ベラとナチョ。
シーフードを入手し難いデリーにて、同じ“魚を食べる民”として互いの国の料理を披露し合い、お酒と音楽を交えてインドの夜長を愉しんだ。そんな彼らの本帰国を機に、念願の再会を果たすこととなった。



待ち合わせはスペイン北部に位置するバスク州ビルバオにて。その昔、鉄鋼で栄えながらも、産業の衰退につれ活気を失ったこの地方都市。近年、グッゲンハイム美術館の建設を要とした“アートによる都市再生”に成功し注目を集めている。石畳の旧市街と近未来的な建築が美しく融合するビルバオ。ユニークなデザインのグッゲンハイム美術館は、現代建築としても評価が高い。



シンガポールでもエキスポ駅を手がけた著名な建築家デザインの地下鉄駅。



この地を訪れるのは2度目。
前回はちょうど彼らに出会う直前で、初対面の際にビルバオの話をしたことを覚えている。かつて一人で旅した地のバルで、夫と共に友を待つ。そんな素敵な巡り合わせ。やがて現れた友の笑顔が、離れていた年月を一瞬で吹き飛ばした。何物にも代え難き至福の一杯。



フュージョン系バルの一番人気店。液体窒素を使うなど斬新なピンチョスが揃う。



芸術品のように見目美しき創作ピンチョス。いつまでも眺めていたい!



バカラオを炙ってカナッペに載せ、チューブに入った液体サラダと共に頂く。





世界一の美食の街、サン・セバスティアンへ

彼らの故郷へと向かう前に、高級避暑地として栄えた港町、サン・セバスティアンに立ち寄った。



ビーチ脇の回転木馬がいかにも避暑地らしい。



魚屋で小エビやツブ貝を買い食い。



サン・セバスティアンはピンチョス(ひと口おつまみ)発祥の地として知られるグルメな街。天井から生ハムが吊されるオーセンティックなバル。



人口18万の小さな街にミシュランの星付きレストランが密集し、その人口当たりの“星密度”はダントツで世界一。旧市街にはバルがずらりと軒を並べ、世界各地から美食家が訪れる。常に賑やかなバルの店先。床が汚れているのが人気店の証。



口いっぱいに幸せ広がる、フォアグラを使った贅沢な一皿。



チャコリと呼ばれるバスク特産の微発泡白ワインを片手に、各バルの名物ピンチョスをつまんでは、次のバルへとはしごする。フォアグラやうなぎの稚魚など、高級食材を手軽にピンチョスで頂けるのはここならではの魅力。



でも、やっぱり蒸しムール貝みたいにシンプルなのが美味しいよ、とナチョが囁く。10年近くインドで暮らした彼ら。時々、今スペインにいるのが夢かと錯覚することがあるという。まして私たちが一緒なこの状況。杯を重ねるごとに、スペインの路地がインドの雑踏に思えるような、不思議な感覚に包まれる。



素朴な村、シマンカスのミニマルな暮らし

彼らの生まれ故郷は、標準スペイン語発祥の地バリャドリッド。訛りのない美しいスペイン語を学びに、世界中から留学生が集まる大きな街。でも大都市デリーから戻った彼らが選んだのは、バリャドリッドから車で10分、人口5千人の小さな村シマンカス。静かな村の中心広場。



じゃがいも畑を抜けて隣村までお散歩。ゆったり流れる満ち足りた時間。



しばらく静かな環境で暮らしてみたくなって、とベラ。川沿いの丘に伝統的な家々が並び、道行く人々が挨拶を交わす。村の中心には教会と図書館、数件のお店があって、選択肢は少なくとも、生活するには十分だ。心洗われるシマンカスの夕焼け。



村に着いた晩は、彼らの友達が家に招いてご馳走してくれた。翌日はその友達を招いて皆で料理する。ナチョが作ってくれたのは、米の代 わりに細いパスタを使うパスタパエリヤ「フィデウア」。う~ん絶品!



キッチンで料理しながらワイワイ飲むのがスペイン流の幸せ、とベラはインドでも言っていたっけ。人との交わりを大切にし、よく食べ、よく飲み、よく笑う、心豊かな時間。ゆるやかに思えた1週間の滞在もあっという間に過ぎた。いつの日か彼らを日本に招く時がきたら、どんな日本を見せてあげられるだろう。またの再会を誓い、夕焼けに輝く美しき村を後にした。



番外編:ピンチョスいろいろ

箸休めにぴったりのピクルス。(右端)



チョリソのうまさに開眼!(左端)



スパニッシュオムレツ”トルティーヤ” は朝食にも人気。(真ん中)



シンプルに生ハム+バゲットが一番!(左端)



カニカマもよく見かける。(真ん中)



バスク名物” ヒルダ”=アンチョビ+オリーブの実+青唐辛子の酢漬け。(右手前下)



バスクの代表的郷土料理”バカラオ(干し鱈)のクロケッタ”(左奥上)




連載 こちらもおすすめ