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【佐藤さんの住宅探し】
~中途解約①~

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住宅を家主に返却する際の注意点

不動産仲介業者の山田さんが、コンドミニアムを見学している佐藤さんに、シンガポールで住宅を探す際、退去する際に気をつけることを解説しています。


前回のポイント(敷金の回収)

● 敷金が返金されない場合には少額訴訟の手続を取ることが有効
● この少額訴訟のための裁判所から呼び出しがあった段階で敷金回収ができることがある
● 少額訴訟は仲裁裁定のため法的拘束力はない
● 本当に裁判になったときには訴えを起こした側に有利に働く
● ただし実際には敷金の額に比べて訴訟費用の方が高いのでなかなか裁判にはなりにくい
● どのような人が家主であるかを確認して住宅を決めるのがベスト
● 家を返却する際に家主さんとなるべくもめないように注意して住宅を使用する



今回のテーマは中途解約

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佐:私の知人で、契約の途中で家族が帰国したので、中途で解約しようと思ったところ家主さんに断れたケースがありますが、このような場合どうすればよいのでしょうか?
山:基本的にはお話のように家主さんに断られてしまっても仕方がないのが実情です。


佐:契約にはディプロマティッククローズがあって、シンガポール国外に転勤等で出る場合には契約を解約できるのではないのでしょうか?
山:ディプロマティッククローズは、確かに転勤等の事情により国外に出る場合には、2か月の書面による事前通知で契約を解約できます。しかしこれはあくまでEP保持者のご主人のみに適用されるもので家族の帰国の場合には適用されません。


佐:それは大変ですね。私も、もし家族が帰国してしまうと住宅の予算が減額されて、今の3ベッドルームの賃料を支払うことができなくなってしまいます。どうすればよいでのすか?
山:ご説明申し上げましたように、法的には家主の同意なしに解約することはできませんので、個別に家主さんにお願いしてどのくらいのペナルティを支払えば解約してくれるのかを確認します。同時に、会社に事情を説明して自己負担を減らしてもらうようにお願いするしか方法はありません。


佐:家主さんは認めてくれるのでしょうか?
山:それは何とも言えません。厳しい家主さんですと中途解約は一切認めてくれない、というケースもあります。


佐:そのような事態を避けるための方法は何かありますか?
山:事前に、契約をする際にディプロマティッククローズの適用を家族まで広げるように記載しておけば問題なく解約できると思います。しかし、その場合でも家族のビザ(DP)の解約の証明が必要になります。また、契約更新の際、受験などで将来、家族の人数が変わる場合に住宅を転居できるように2年更新ではなく1年更新にすることも考えておかなくてはなりません。


佐:そんなに自由に契約の内容を変えることはできるのでしょうか?
山:会社のひな形を利用する場合でも、それぞれの事情により文言を変更することは可能です。そのため、レターオブインテントの段階でそのような変更をきちんと書いておくことが必要です。
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今回のポイント

ポイント1:
● ディプロマティッククローズは通常家族の帰国には適用されない

ポイント2:
● 家族にも適用させたい場合はその旨きちんと契約書に記載する

ポイント3:
● 更新の際に将来受験などで家族人数が変更される可能性がある場合には、2年更新ではなく1年更新とする





教えてくれたのはこんな人

高野 徹
TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD/TRE 21 PTE LTD

82年東急不動産入社。93年からシンガポール駐在、不動産仲介、エアコン保守を手がける。
01年東急不動産より会社譲渡を受ける。
宅地建物取引主任者、シンガポール不動産仲介業有資格。
お問い合わせは、takano@tokio.com.sgまで
www.tokioproperty.com.sg

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