#housing

【佐藤さんの住宅探し】
〜退去手続③〜

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住宅を家主に返却する際の注意点

不動産仲介業者の山田さんが、コンドミニアムを見学している佐藤さんに、シンガポールで住宅を探す際、退去する際に気をつけることを解説しています。


前回のポイント(退去手続②)

● 電気ガス水道の停止は自分で行う
● 電気ガス水道は家を家主さんに返す翌日に切れるようにする
● 壁のフック等はできる限り撤去する
● テープを使用している場合には無理に剥がさずシール剥がしなどを利用する
● 鍵の数の確認、各ベッドルームの鍵の作動状況の確認を行う
● 家の返却の手続は場合によって2時間程かかることもあるのでその位の余裕をみておく



今回のテーマも退去手続きについて。敷金回収

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佐:家を返すのも結構大変ですね。
山:私どもでは最初に鍵をお客さまにお渡しする際に、かなり詳細に記録をとりますが、それでもご退去の時には記録が漏れているようなことも結構あります。
家主さんはいろいろな人種の方がいらっしゃり、それぞれ文化も全く日本人と異なります。その上、家具まであるとその使用状況についても何を言われるか全く分かりません。
また、お客さまもそれぞれご自身の生活スタイルが基準となっていますので、〈普通〉に生活していた、ということはその人にとっての〈普通〉かもしれませんが、家主さんの生活スタイルからすると〈普通〉とは考えてくれないこともあります。


佐:なるほど、自分でどんなに綺麗に使っていたと思っていても極端にきれい好きの人からすれば不十分かもしれませんね。
山:そのため、いつも退去時の修理費用の見積りの決着、敷金の返金を受けるまではなかなか安心できません。


佐:敷金が返ってこない、ということもあるのでしょうか?
山:全額返ってこない、ということは滅多にはありませんが、やはり1~2%くらいは様々な事情で回収が難しいことがあります。


佐:そのような時はどうすれば良いのでしょうか?
山:大抵の場合には修理費用の額や差引の項目を巡って話しがつかないため、戻って来ないケースが多いので、まずは粘り強く何度か交渉を重ねて最後はいくらかのディスカウントで双方納得することが先決です。


佐:どのくらいの交渉が必要なのでしょうか?確か契約書には家を返してから2週間以内に敷金は返金されると書いてあったような気がしますが。
山:契約書には〈2週間以内〉と書いてありますが、実際には修理費用の額が双方納得していないので、その部分をなおざりにして敷金の返金は実現しません。そのため実際にはそれよりも長くかかることが多いようです。
ただ、決着したら小切手を回収して、すぐに口座に入金する必要があります。これも時々ありますが、もらった小切手の家主口座の残高が不足していて現金化できないようなこともあります。


佐:もし修理費用について双方決着しなかったらどうなるのでしょうか?
山:その場合には簡易裁判所にて少額訴訟の手続に入る必要があります。


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今回のポイント

ポイント1:
● 家の返却にあたってはどのような問題が発生するかケースバイケース で非常に見通しが立てにくい

ポイント2:
● シンガポールのように多民族国家の場合〈普通〉や〈常識〉という概念 が通用しにくい

ポイント3:
● 敷金の返金は家を引き渡してから2週間後と契約書に記載されてい るが実際はそれ以上かかるケースが多い

ポイント4:
● 敷金返金が決着しない主な理由は修繕項目とその見積り費用

ポイント5:
● 敷金を小切手で回収したらなるべく早く口座に入金する

ポイント6:
● どうしても敷金返金について決着しない場合には簡易裁判所で少額 訴訟を起こす必要がある





教えてくれたのはこんな人

高野 徹
TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD/TRE 21 PTE LTD

82年東急不動産入社。93年からシンガポール駐在、不動産仲介、エアコン保守を手がける。
01年東急不動産より会社譲渡を受ける。
宅地建物取引主任者、シンガポール不動産仲介業有資格。
お問い合わせは、takano@tokio.com.sgまで
www.tokioproperty.com.sg



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