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【佐藤さんの住宅探し】
~退去手続④~

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住宅を家主に返却する際の注意点

不動産仲介業者の山田さんが、コンドミニアムを見学している佐藤さんに、シンガポールで住宅を探す際、退去する際に気をつけることを解説しています。
 

前回のポイント(退去手続③)

● 家の返却にあたってはどのような問題が発生するかケースバイケースで非常に見通しが立てにくい
● シンガポールのように多民族国家の場合〈普通〉や〈常識〉という概念が通用しにくい
● 敷金の返金は家を引き渡してから2週間後と契約書に記載されているが実際はそれ以上かかるケースが多い
● 敷金返金が決着しない主な理由は修繕項目とその見積り費用
● 敷金を小切手で回収したらなるべく早く口座に入金する
● どうしても敷金返金について決着しない場合には簡易裁判所で少額訴訟を起こす必要がある

今回のテーマも退去手続きについて。敷金回収

今回は敷金を回収するための最終手段となる、少額訴訟等について不動産業者の山田さんが佐藤さんに説明します。

佐:少額訴訟というのはどういう制度なのでしょうか?
山:名前のとおり金額があまり大きくない、$10,000以下の金銭についての訴訟です。基本的には請求書を相手方に発行して、その金額が支払われなければこの簡易裁判所に申し出て支払いを求める方法です。


佐:裁判をするということですか?
山:裁判というよりは仲裁に近い方法です。申し立てをすると裁判所が半ば強制的に相手を呼び出してくれて、裁判所内で相手方と一対一の面談をします。仲裁人をはさんで協議する、ということですので裁判というよりは仲裁という形をとります。


佐:どのようにして申し立てるのでしょうか?
山:問題となっている状況について簡単な事情説明のレポートを提出して、$100~200位(請求金額の額によって異なります)の費用を支払って相手方を呼び出してもらいます。呼び出しは裁判所の召喚状をもってなされますので、受け取るとかなりインパクトがあります。


佐:なるほど、そのようにして相手を裁判所に呼び出す訳ですね。
山:裁判所の召喚状が来ると普通の人は結構びっくりして、この段階でこれまで協議してきたことが裁判所に行く前に決着することもあります。


佐:先方としては裁判になるくらいだったら早めに決着しようということですね。
山:おっしゃるとおりです。この方法をとることで相手にプレッシャーをかけて問題を解決するということです。


佐:もし先方が呼び出しに応じて裁判所に来た場合どのような手続をとるのでしょう?
山:裁判といっても仲裁のようなもので、調停をする人と訴えを起こした人、訴えられた人の3人で協議することになり、それ以上の人数は認められません。


佐:なるほど、当事者しかダメということですね。
山:そうです。この3人で話し合うわけですが、調停する人が最終的に2人の意見を聞いて妥協案を提示し、それぞれが納得すればよし、納得しなければ本格的な裁判、ということになります。


佐:本格的な裁判になるとどうなるのでしょうか?
山:正式な弁護士を委任して手続を進めるのですが、多分その弁護士費用だけで数万ドルになりますので、費用対効果の点では正式な訴訟は避けた方がよいでしょう。


今回のポイント

ポイント1:
● 敷金を取り返す方法としては少額訴訟を利用する方法がある


ポイント2:
● 申請のためには経緯を説明した文書と、訴える額により手続費用が$100~200位かかる


ポイント3:
● 裁判所から召喚状を相手が受け取った段階で相手が妥協して決着することもある


ポイント4:
● 裁判とはいうものの実際は調停のようなもので、調停案に強制力はない


ポイント5:
● 弁護士を使った訴訟に進むと費用対効果からするとあまり意味はない





教えてくれたのはこんな人

高野 徹
TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD/TRE 21 PTE LTD

82年東急不動産入社。93年からシンガポール駐在、不動産仲介、エアコン保守を手がける。
01年東急不動産より会社譲渡を受ける。
宅地建物取引主任者、シンガポール不動産仲介業有資格。
お問い合わせは、takano@tokio.com.sgまで
www.tokioproperty.com.sg



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