前回のポイント(退去手続④)
● 敷金を取り返す方法としては少額訴訟を利用する方法がある
● 申請のためには経緯を説明した文書と、訴える額により手続費用が$100~200位かかる
● 裁判所から召喚状を相手が受け取った段階で相手が妥協して決着することもある
● 裁判とはいうものの実際は調停のようなもので、調停案に強制力はない
● 弁護士を使った訴訟に進むと費用対効果からするとあまり意味はない
今回もテーマは退去手続、敷金の回収について
引き続き佐藤さんが不動産業者の山田さんに質問します。
佐:なるほど、問題があっても裁判で取り返すことができないのですね。
山:取り返すことができない、というより
取り返すための費用が回収すべき敷金よりもかかってしまう、ということです。でも
家主さんに対する効果としては面倒なことになるより、妥協して返金しようという気にさせることができます。
佐:決着したとして、通常はどのように返金してもらうのでしょうか?
山:私どもでは先方が返金する、と言ってきたら必ず受け取りに行きます。よく郵送で小切手を送るから、あるいは送金で返金するから、と言われます。ですが本当に送るかどうか分かりません。またテナントさんが受け取ったかどうかも分からないので、
できる限り小切手ないしは現金を私どもで受け取り、お客様に返金するようにしています。
佐:送ってこないこともあるのですか?
山:そうですね、通常は何度も督促しないと〈送った〉〈送った〉の繰り返しで確認手続に時間がかかり、場合によってはお客様の会社の総務さんがこのことを忘れて、弊社はすでに受け取られてたと思ってしまうこともあります。その事実が1年後になって分かり、さらに回収が難しくなることがあります。
佐:そうですね、会社の総務さんもそのことばかりやっている訳ではないので、そういうこともあるかもしれませんね。
山:この敷金の回収と同じように、契約を更新するときに賃料が減額され、それに伴って敷金が返金されるようなときも、同じような問題がでます。
佐:そのときはどうするのでしょうか? やはり先方に連絡して小切手を回収するのですか?
山:もし可能であれば、
更新をした最初の月の賃料からその分を減額して支払うのが最も簡単な方法です。でも会社さんによっては手続が大変なので、やはり小切手等で回収するしかないケースもあります。
佐:なるほど、
敷金の返金が決まっても回収手続が結構大変ですね。
山:皆さまが家をお決めになる手続と同じか、それ以上に皆さまが家を家主さんに返すときの方が難しい問題が多く、実際何が起こるか分からない状況があります。日本では敷金から差し引いてよい事項の指標が国土交通省から発行されていますが、当地ではそのような指標もないので大変です。
今回のポイント
ポイント1
● 敷金回収等の問題を法廷で争うとしても回収すべき金額より訴訟費用が高くつくためあまり意味はない
ポイント2
● ただ、そのポーズを示すことで先方から妥協を引き出すこともある
ポイント3
● 決着したら実際の回収は必ず家主側に会って小切手や現金で受け取るようにする
ポイント4
● 郵送、送金の手続は回収に時間がかかるだけである
教えてくれたのはこんな人
高野 徹
TOKIO PROPERTY SERVICES PTE LTD/TRE 21 PTE LTD
82年東急不動産入社。93年からシンガポール駐在、不動産仲介、エアコン保守を手がける。
01年東急不動産より会社譲渡を受ける。
宅地建物取引主任者、シンガポール不動産仲介業有資格。
お問い合わせは、takano@tokio.com.sgまで
www.tokioproperty.com.sg