#mental care

【心ひも解くヒント】
完璧主義の落とし穴

頑張りすぎてヘトヘト……
そのままで、どこかで止まりますか?

相手に喜んでもらいたい、役に立ちたい、というのは、ポジティブで尊い思いですが、時に頑張りすぎて疲労困憊し、「もう無理!」と途中で全て投げ出したり、止めざるを得ない状況になってしまう人がいます。
このような人は「やるならきちんとしなければ」という気持ちが人一倍高く、手を抜いたり、人に頼ることも苦手です。
そのため、いつの間にか自分で自分をどんどん追い込んでいくことに繋がりやすいです。

では、どのような人がこのパターンに陥りやすいと思いますか?

答えは(一般的に)「完璧主義で、真面目」。
能力もあるが、自己評価が低く周りの目が気になり、考え方の柔軟性が低い」という傾向があります。これは、外国人の持つ日本人のイメージとも重なりますね。

さて、最初の性質、「完璧主義」というのは、周りに同じことを求めない限り、本人以外には悪いことはなさそうですが、「〇〇さんは、完璧主義だから。もっと楽にしたらいいんだよ」など、良い意味で使われないことも多いです。
でも完璧主義も①「健康的」な完璧主義と、②「不健康」な完璧主義があるのをご存じでしょうか?

①は、実現可能で、自分も少しは背伸びして頑張らなければならない、ちょっと高めの標準に合わせたゴール設定をします。
それに対して、②はそれよりもかなり高めのゴール設定で、非現実的なゴール設定をします。
イメージは、本人の力が100とすると、ゴールは110~120が①で、150以上が②です。
また、これは「能力的」にその行動が可能かという基準ではなく、自分の持つ時間(他の作業や趣味、休息などを抜いたもの)やキャパシティ、モチベーションなどを考慮したものです。
同じ100を持っているとしても、独身の方と、小さなお子さんを育てている方では状況は異なります。

次に、ゴールを達成できなかった時の反応として①は、今回はそのゴールに達成できなかったとしてもその事柄や活動を、一度ペースの仕切り直しをして継続していくことができます。
しかし②は一切合切止めてしまい、そのことを考えるだけでも辛くなるか、最初のゴールに執着して、是が非でも達成することに今まで以上に固執します。
そのため、最初の「相手に喜んでもらいたい」「役に立ちたい」という気持ちよりも、意地で必死になることが多いので、何のためにやっているのか分からなくなることも起こります。
②を不適切完璧主義(Maladaptive Perfectionist )と呼んでいます。

「完璧」というのはそもそも、幻想でしかありません。
自分のできる範囲で頑張り、そこに満足する。
そしてその中で誰かの役に立てたり、喜んでもらえれば、十分に素晴らしいことではないでしょうか。




This Month’s Hint(今月のヒント)

リサーチによると完璧主義は、特に若い人たちの中で近年増加傾向にあります。
理由の1つが、常に自分を人と比較し自分のベストなところを社会に向かって見せなければという意識の高まりです。
(とくにSNSでは皆が最上の自分を演出しているので、それが基準になる)




教えてくれたのはこんな人

山形千尋
BeeYrOwn 心理士。シンガポール心理学会公認心理士。
オーストラリア・カウンセリング協会員。
(応用心理学修士、教育カウンセリング学士)

BeeYrOwn Psychologist & Counsellor
308 Telok Kurau Rd Vibes @ East Coast
☎ 9665-4572
Email: beeyrown@aim.com
http://beeyrown.blogspot.com
診療日(完全予約制):火、水、木、土

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