mental care

【心ひも解くヒント】
親子関係の暗闇

親子関係の暗闇


子どもは親の何を見て、何を思うのか?
親の記憶、子どもの記憶

ある男性の記憶では、自分と母親の関係は決して良いものではなかったそうです。
突然キレて、酷い言葉で自分を罵倒、否定したかと思うと、翌日は明るく朗らかで楽天的な彼女のギャップや、態度が予測できない感じが怖かったとか。幼少のころはそれでも母親に愛されようとしていたが、小学校中学年くらいから、嫌悪感から離れたいと思うようになったと言います。

しかし大人になった今、母親は懐かしそうに「私たちは本当に良い母子関係が築けていた」と語るそうです。その度に彼は、違和感を覚えるのですが、自分の記憶や感じ方が違うのか、と困惑もします。
現在の母親は、孫を愛してくれる、おばあちゃんでしかないそうです。

母親はとても我が強く、何かあると全て人のせいにして、謝ったことがない人でした。父親は、感情の起伏がほとんどなく無口で、どちらかというと冷たい人で、夫婦は頻繁に喧嘩をしていました。彼は子どもの頃、階段に座り、隠れて両親の喧嘩を聞いていました。嫌だったけれど、聞かずにはいれなかったそうです。

喧嘩の末に、ドアがバンっと閉まる音がして、父親が家を出るのですが、その度に母親は「お父さんは出て行った。いつ帰ってくるのかわからない。帰ってこないかもしれない」とイライラしながら言うのです。
彼は、このまま父親が帰ってこなかったら、母親と二人残されるのかということが不安で恐怖でした。身勝手に出て行ってしまった、僕らを捨てたのかもしれない、父親への怒りは全く思いもよらなかったそうです。

両親ともが、温かな安定した愛情を注いでくれるタイプではなかったので、自分を守ってくれる存在とは思えず、小学校高学年からしばらく続いた、いじめのことも両親には一切相談しませんでした。しかし、彼は「どちらかというと、父親の方がよかった」そうです。可愛がり+見放しを気分で行なう母親よりも、父親には変らない安定感がありました。


大人になった今、彼は子どもの頃のことを父親に尋ねました。
すると、父親は「自分は、キレて怒鳴り、話しができない妻から離れることしかできなかった」のだそうです。妻が息子に「あんたの父親は、もう帰ってこないかもしれない」などと言っていることは想像もしなかった、本当に悪かった、と言いました。

親に悪意がなかったとしても、心が深く傷つけられた、不安だった、怖かったという事実があるのならば、子どもにはそれを指摘する権利があります。兎角、過去のことだ、悪気はなかったのだろう、などと無理に肯定したり、封印しても、それはしこりとして、今の人生に影響していることもあります。

子どものころに、親に否定されたり、両親の仲が悪いと、子どもは自分を責めるようになります。ですが今、起こったことの責任の在りかに気づくことで、自己肯定心が低い人は今後の人生をより自分らしく強く生きるための一歩が踏み出せるでしょう。



This Month’s Hint(今月のヒント)

向き合うことで、発見でき、乗り越えられることも多いです。つまづきの深さや、繰り返されるネガティブなパターンに気がついたら、勇気を出してみませんか。




教えてくれたのはこんな人

山形千尋
BeeYrOwn心理士。(応用心理学修士・カウンセリング学修士)
オーストラリア・カウンセリング協会会員、シンガポール公認心理士。

BeeYrOwn Psychologist & Therapist
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