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【シンガポールNOW】
植物のサブスクでオフィス緑化
ユニバーサル園芸社の関氏インタビュー

-Singapore-
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シンガポールNOW

植物のサブスクでオフィス緑化
ユニバーサル園芸社の関氏インタビュー

オフィスに観葉植物などのグリーンアイテムを設置する「オフィス緑化」の動きが日本やシンガポールで広がっている。
社内のウェルビーイング向上のため、より働きやすい環境を追求する方法の一つとして「グリーンに投資するところがかなり増えた」と話すのは日本の園芸会社ユニバーサル園芸社の関丈史さん。
オフィスやホテルへのレンタルグリーン事業を主軸にビジネスを展開している。
2022年6月期の売上高はグローバルで100億円を超えた。中期では売り上げ300億円突破を目標に、「世界一の園芸会社」を目指してグローバル展開にも力を入れている。





◇レンタルグリーンとは?


レンタルグリーンのオフィスへの導入事例(ユニバーサル園芸社提供)

筆者にとっては聞き慣れない言葉だった。
「レンタルグリーン(貸し植木)」。植物をレンタルするサービスで、月額のサブスクリプション制という。
鉢ごとに費用がかかるが、料金にはメンテナンス費が含まれており、スタッフが定期的に水やりや手入れ、枯れた場合の交換もしてくれるので、手間なしで生き生きした植物を楽しめる。

ユニバーサル園芸社がシンガポールに進出したのは18年。
地元同業ミラージュ・グリーンを買収した。
関さんは買収以降ミラージュ・グリーンのデピュティマネジングディレクター(副代表)を務めている。
「シンガポールはレンタルグリーンのニーズが高く、新設や改装したオフィスであれば植物を入れるケースが大半。
内装・設計にグリーンが組み込まれていることが多い」と話す。
シンガポールではホテルとの取引も多い。
有名ホテルのフラトンやセントレジスでは専用作業場を設けスタッフを常駐させている。

ニーズの面では、日本市場も活況と関さん。
これまでオフィスへの設置目的は「対外イメージを良くするためと受付に置く場合が多かったが、今では福利厚生の一環として社員向けに社内に設置するケースが多い」。
大手では社内のグリーンに月額100万円ほど投資する企業もあると言う。
グリーンの効果は仕事の生産性とも関連があると注目され、オフィス緑化のトレンドは加速している。


ミラージュ・グリーンの副代表、関丈史さん=4月14日、シンガポール







◇花と緑なら、「何でもできる」


生花サブスクリプションサービスの案内(ユニバーサル園芸社提供)

気になる費用だが、シンガポールでレンタルする場合、「大鉢が1鉢月額35シンガポールドル(約3500円)前後。
小さいものであれば1鉢月額10~30ドル」。
貸し出すだけではなく、「植物で空間のトータルのコーディネートを行う」と話す。
企業の予算とイメージ、環境に合わせた、最適なソリューションを提案している。

ミラージュ・グリーンは、花と緑に関する何でも屋だ。
「植物、お花、装飾に関する事は大体、何でもできる」のが売りのポイント。
造花装飾、イベント装飾、ギフトフラワー、桜の販売も手掛けている。
最近「評判がいい」というのは、生花のサブスクリプション制サービス。
費用は月額100ドル以上からで、自宅に整えられた生花が届く。在宅勤務が多くなってから需要も増えた。






◇創業者80歳までに売り上げ3倍へ

ユニバーサル園芸社は1968年に創業。
創業者である代表取締役会長の森坂拓実氏が20歳の時に立ち上げた。
従業員数はグループ全体で2022年6月末現在、955人。
レンタルグリーンで始まり、現在はレンタルグリーンを含むグリーン事業が全体の約7割を占める。
それ以外はガーデンセンター、フラワーショップ、ネット販売などの小売り事業が2割。造花、観葉植物などの卸売り事業が1割と事業内容も拡充している。

日本国外では上海、米国、シンガポールの3カ所に拠点を持つ。
森坂会長が80歳を迎える5年後までに、22年6月期の3倍となる売り上げ300億円達成を目指し、事業の多角化を図りながら、海外事業にも力を入れる。
東南アジアの他の地域でも合併・買収(M&A)を検討しているという。




◇植物好きな関さん

関さんは新潟県出身。
東海大学で建築を学んだ後、ユニバーサル園芸社に入社した。
植物好きで、30代でシンガポール事業を任された。
関さんは、通常ワーカースタッフが行うメンテナンスを自ら手掛けることもある。
「植木に水をあげたり、ハサミを入れたり。植物を触る現場が好き」。
取材の日も、自社のレンタルグリーンを前に写真撮影をすると、気になるところがあったのか、自然と手が伸び手入れをし始めた。
「新芽が出るのも、花や葉が枯れるのも全部含めて変化。時間を感じるところがいいなと思う」とほほえむ。

シンガポールでは日本との嗜好(しこう)の違いも意識している。
日本では和風庭園で見られるように、間引いてヌケ感を作ったり、空間を作って枝ぶりを見せたりするのが美しいという感覚があるが、シンガポールでは「葉っぱが多くボリューミーで隙間がないものの受けが良い」。
四季がなく、地震、台風のリスクが小さいという条件がそろい、街の植物も伸び伸びしている。
日本では安全性を考慮し「あそこまで街路樹は伸ばせない」。
地元の地理的条件も人の好みに影響しているのではと考えている。

そんな関さんにイチオシの植物を聞いてみた。
「個人的にはシェフレラ」。
シンガポールでもよく見かけるカポックより葉がほっそりしていて、樹形に個性がある。
「野生感があり、力強い」のが推しポイントだ。
ユニバーサル園芸社が仕入れ先の一つとしている東京・八丈島で採れるものは、樹形が太くダイナミックなことで知られている。
シンガポールへの供給はあまりないことから、新しいデザインとして認知を広げることもやっていきたいと話した。


(時事通信社 シンガポール支局)









※2023年5月4日にアップデートされた情報です。


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