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住友生命発のTomoWork、障害者への奨学金設立
シンガポールで初、成績に関係なく支給

-Singapore-
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住友生命発のTomoWork、障害者への奨学金設立
シンガポールで初、成績に関係なく支給

障害を持つ大学生に学業成績に関係なく給付する奨学金制度が5月30日にシンガポールで初めて設立された。
実施するのは住友生命保険からの寄付を受け、同社出身の日本人社員らが中心となり運営しているNPO法人TomoWork。
シンガポールの奨学金は成績優秀者に給付されるものが多く、障害を持つ学生にはハードルが高いという課題に一石を投じる。
同法人の百田牧人最高経営責任者(CEO)は「すべての学生が生い立ちや障害の有無にかかわらず、学業で成功する機会を得るに値すると信じている」と力を込めた。



◇低所得者層が対象、学業専念できるよう

奨学金制度「タレント・アップリフト・プログラム(TUP)」設立のきっかけとなったのは、TomoWorkが4年前に始動した障害を持つ学生への就労促進プログラムで見えた課題だった。
学校と企業の橋渡し役を担い、障害者就労を多面的にサポートしているTomoWorkだが、学生は経済的な理由で学業に専念できないこともあるという課題の深刻さを痛感した。

2022年にプログラムを卒業したベネディクト・リムさんは、難聴を抱えながらも機械工学士を目指し南洋理工大(NTU)に合格した。
現在は大学3年生。
母子家庭に育ち月収は約1300シンガポールドル(約13万円)という。
学費のほかに高額な補聴器の更新などで家計が苦しいからと、リムさんは配達ドライバーとして働きに出ている。

「授業は録音して聞き直し、わからないことは教授に聞きに行く。勉強は大変で忙しい」とリムさんは控えめに語る。
人一倍の努力を続けながらも、働き続ける勤勉ぶりをTomoWorkメンバーは見てきた。
こうした学生の助けになりたいというのが今回の狙いだ。

TUPは、低所得者層の特別支援を必要とする大学生を対象とする。
選考では「学業成績に応じて」という項目をあえて取っ払い、適性や態度で判断する。
受給者にはメンターシップや進路指導も受けれるように。
年間一人4000ドルを10人に給付し、受給者は在学中は再度申請できるようにした。


就労促進プログラムの成果発表会の様子



◇インクルーシブな職場作りを


イベントに参加したデスモンド・リー国家開発相(中央)

TUPの新設イベントに参加したデスモンド・リー国家開発相はあいさつで、障害を持つ人はスキルや才能で企業に貢献できるだけでなく、職場内の多様性を高める意味でも重要と説明。
特に成長産業の企業から「インクルーシブな職場作りに向け、一歩踏み出してほしい」と奨励した。
シンガポールは2030年までに障害者人口に占める就労比率を4割に引き上げる目標を掲げている。

同日に開催された就労促進プログラムの成果発表会では、24人の参加者がパートナー企業の課題解決案をグループごとにプレゼンした。
声援や笑いありの和やかな雰囲気。
パートナー企業でゴム製の視覚障害者用歩行誘導マットなどを手掛ける錦城護謨(大阪府八尾市)からは太田泰造社長が参加した。
「本当に参加してよかった。生み出したプロダクトが社会に貢献していくことを肌で感じれたのが嬉しかった」と笑顔で語った。





(時事通信社 シンガポール支局)

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※2023年6月1日にアップデートされた情報です。


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