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【シンガポールNOW】
元なでしこ北原佳奈選手、女子サッカー界に新風
アルビレックス新潟シンガポールで活躍

-Singapore-
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シンガポールNOW

元なでしこ北原佳奈選手、女子サッカー界に新風
アルビレックス新潟シンガポールで活躍

女子サッカー元日本代表の北原佳奈選手がアルビレックス新潟シンガポールに移籍して約1年がたった。
「シンガポールの女子サッカーが変わる大きなムーブメントを生み出す」と会長が期待を込めて招集した逸材だ。
北原選手は今シーズン、12試合で17得点を挙げる好調ぶり。(9月27日現在)
ワールドカップ(W杯)カナダ大会で準優勝の実力を誇る元なでしこは、シンガポールの女子サッカー界に新風を吹き込む。
アルビレックス新潟シンガポールは今年で設立20周年。
「男女共にリーグ優勝」を目指し、さらなる高みを目指す。



◇昨年より女子リーグが本格始動

まず、シンガポールで女子サッカーリーグが2022年から本格始動したのはご存じだろうか。
会計事務所大手デロイトがスポンサーに就き、デロイトを冠する女子サッカーリーグ「WPL(ウィメンズ・プレミア・リーグ)」が動きだした。
これに合わせ、アルビレックス新潟シンガポールも女子チームを発足。
アルビレックスは「女子チームの設立は悲願であった」と言う。
ただ、現時点でリーグにプロ選手は一人もいない。
今年度は計10チームが戦うが、ライオン・シティ・セーラーズFCのような資金潤沢なチームでも全員が仕事・学業と選手を兼業している。

「小学生の頃から」海外に行きたいとの思いを抱いていたという北原選手。
アルビレックス新潟シンガポールの是永大輔会長との電話一本で移籍を即決した。
北原選手にとっては、過去に日本のアルビレックス新潟レディースに在籍していたことがある馴染み深いチームだった。
「好きだったアルビレックスでまたプレーできる」。
オレンジ色のユニホームに再び袖を通した。
ポジションはDFだが、9月末時点で17得点を上げ、得点数はリーグで断トツの首位。
北原選手の存在はリーグ全体を盛り上げている。





◇ベテラン勢と共に戦ったW杯

北原選手は15年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会に出場し、準優勝の勝利に貢献した実績を持つ。
なでしこが初優勝の快挙を成し遂げたのは出場の前回大会に当たる11年だった。
11年大会に北原選手は出場していなかったものの、15年大会もなでしこの強さは健在。
澤穂希選手などベテラン勢と共にW杯を戦い抜いた。
試合でうまくいかなかった部分は選手同士で話し合い解決したり、監督にも思ったことを言えたりと「とてもいい関係」だった。
ベテラン勢は「出られない時も悔しい感情を一切出さず、出る選手のために働き頑張っている」姿からも学びが多かった。
「この人たちに付いていきたい」と思える環境だったと振り返る。

北原選手がサッカーを始めたのは6歳の時。兄の影響だった。
サッカーが盛んで「サッカーのまち」と呼ばれる静岡県藤枝市で生まれ育った。
中学時代はソフトボール部に所属し、高校ではソフトボールとサッカーの両部活からオファーを受けたが、サッカーを選んだ。
高校時代にはチームを全国大会で優勝に導く。
大学時代はユニバーシアードサッカー日本代表で活躍した。
その後、アルビレックス新潟レディースを経て、シンガポールへの移籍前までマイナビ仙台レディースに所属した。



◇女子サッカー「知ってもらいたい」



北原選手の懸命な姿にチームメンバーも刺激を受けている。
「うまくなりたいと思う選手が増え、基準が上がった」と感じている。
早めに練習に来て教えくれと頼まれることもある。
「自分一人で活躍しようというより、シンガポールの選手と一緒に戦って勝つ喜びを味わいたい」。
チームメートはほとんどがローカルの選手だ。
言語が違うということもあるが、プレーで見せることが一番響くと確信している。
目指すは、もちろん今シーズンの優勝。
相手も北原選手をマンツーマンで強くマークしてくる。
北原選手がシンガポールで戦うことで「シンガポールの女子サッカー自体(のレベル)が上がっていってほしい」。
そう願いを込めて今日もピッチに立つ。

「女子サッカーをもっと知ってもらいたい」。
北原選手が長年抱いている思いだ。
日本ではW杯で優勝を果たしたこともあり、選手を取り巻く環境は改善しつつあると北原選手は説明する。
日本初の女子プロサッカーリーグ「WE(ウィー)リーグ」では1クラブ15人以上とのプロ契約が必要との定めが設けられ、全体の水準の底上げを図っている。
それでもなお、待遇面では依然、男子サッカーとの差は大きい。

シンガポールではなおさら環境の向上が求められている。
男子はそれなりの環境下でプレーができるものの、女子はグラウンドにロッカーすらないところもある。
「アルビレックスの女子チームはできたばかりなので、応援してもらいたいですね」と北原選手ははにかむ。



「一生懸命頑張る気持ち、サッカーが好きな気持ちはプレーでわかるので、スタジアムにぜひ足を運んでほしい」と話す。
女子のリーグは年間18試合で11月末まで続く。
試合は土日の夕方以降、会場はチョア・チュー・カン・スタジアムで行われることが多い。
詳しい日程はアルビレックス新潟のサイト(https://www.albirex.com.sg/match/women/game-schedule/)で確認できる。
9月末時点のアルビレックス新潟女子チームの順位は、セーラーズに次ぐ2位。
北原選手を筆頭に、初優勝に向けて突き進む。





(時事通信社 シンガポール支局)







※2023年9月27日にアップデートされた情報です。


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