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【シンガポールNOW】
ホーカー専門の日系グルメサイト、どこにも載ってない名店を探せ!
舟川氏インタビュー

-Singapore-
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シンガポールNOW

ホーカー専門の日系グルメサイト、どこにも載ってない名店を探せ!
舟川氏インタビュー


グルメサイト「ジョイントホーカー」を立ち上げた舟川徹さん(右端)


シンガポールのホーカーセンター(屋台村)に魅せられ、ホーカー店舗を日本語で紹介するグルメサイトを立ち上げた人がいる。
東京でソフトウエア会社を経営する舟川徹さん。
シンガポール駐在中に人気店の数々に出会い、大の食好きに火が付いた。

「(こうした店は)どの雑誌やネットを見ても載っていなかった。ならば自分で作る。もっとローカルなものが食べたかった」と、2019年10月に「ジョイントホーカー(JointHawker)」を立ち上げた(サイトのアドレスは https://www.jointhawker.com/ja/)。



国内のホーカー店舗は約2万店。
全店網羅するのが目標だ。
サイトは日本語なので、旅行者や駐在員・家族が使いやすい。



◇ホーカー食べ歩き

立ち上げると決めてから、さらに頻繁にホーカーを食べ歩くようになった。
約1年半データを調査した後にサイトを立ち上げた。
日本に帰任になってからも、足しげくシンガポールに通ってはホーカーで食べ歩いている。
地元民しか知らないような場所でも、大概の店と味を把握しているのが舟川さんの通なところだ。

ホーカーは詳しい人の口コミ情報ほど重宝される。
そうした情報は地元民同士で日常の話のネタとして共有されているが、外国人はあまり知らない。
実力のある人気店は、観光客がガイドブックで知るものだけではなく、もっと豊富に全国に広がっているというのが、舟川さんがジョイントホーカーを通じて伝えたいメッセージだ。

「ジョイントホーカー」は、日本人ライターなどが直接店舗に足を運んで食べた率直なレビューでサイトが成り立っている。
サイトがレコメンド(おすすめ)を立てる。
おいしいものはおいしい、そうでないものも正直に記載する。
写真もあえて「加工しないのがポリシー」。
検索で見つけて足を運んでくれた人が期待したそのものを食べられるよう、ありのままを伝えている。
店舗に行きやすいよう、場所やメニュー、値段も丁寧に日本語で紹介している。



◇「応援したくなる」

シンガポールでは20年、ホーカーセンターが国内第1号の無形文化遺産として登録された。
同根の文化を持つマレーシアから「こちらが本家」などの反発の声が出たことはさておくとして、シンガポールの文化を象徴する存在であることは確かだ。
「文化が融合してフュージョンしている。ワクワクする」と舟川さんは魅力を語る。

国民の食堂として親しまれ、共働き家族を下支えしてきた。
だが、最近では経営者の高齢化で、跡継ぎ問題が顕著になっている。
親は働きに出ていたので、ホーカーを経営する祖父母の元で育った孫世代が店を継ぐケースもある。
そうして受け継いだという「若者が暑い中、一生懸命働いている。応援したくなる。日本人にもおいしいって言ってもらいたい」と舟川さんは情を感じるようになった。

新たに飲食店を経営したい人にとって、ホーカーは1号店を出すよい舞台になっているという側面もある。
店舗賃料が箱型店より安いためだ。
「まずホーカーで始めてみて、軌道に乗り出したら箱型店舗に移る」という気合たっぷりの若き料理家らが腕を振るう。
そうして見事に成功し、大型店に移っていく姿をほほ笑ましく遠目で見守ってきた。
こうした勢いのある隠れた名店を探すのも舟川さんの楽しみになっている。



◇賃料高騰、経営危機も


「栗原ミーポック」の栗原直次さん

シンガポールでホーカーを語る際、欠かせない日本人が地元料理ミーポック店「栗原ミーポック(Li Yuan Mee Pok)」を経営する栗原直次さん。
シンガポールに駐在した後、脱サラして家族で開業した。
14年10月に店をオープンし、22年まで厨房(ちゅうぼう)に立った。
当初は日本食を提供していたが、人気ミーポック店の店主との出会いがきっかけでミーポック店を開業。
日本人が作ったとは思えない本場の味で話題になり人気店となった。
日本風アレンジを加えたしょうゆやみそ味も提供している。
栗原さん家族は地元メディアからも引っ張りだこだ。
23年11月以降は、クレメンティー店、ブーンレイ店の2店舗のみで営業している。



栗原ミーポック(舟川さん提供)

栗原さんはホーカーが直面する経営の難しさを指摘する。
新型コロナウイルス拡大時には、政府からの手厚いサポートで切り抜けたものの、家賃高騰で店舗賃料はこれまでの約1.5倍に跳ね上がった。
外国人の採用は、各種経費を含めると地元民より高額になり人員確保が難しい。
また、メニュー単価を上げたくても価格競争が激しく、上げづらい状況と問題を指摘する。
舟川さんによると、こうした状況から、人気店でないとなかなか採算が合わず、年間で約3000店が閉業しているという。
支持が得られなければ簡単に淘汰(とうた)されてしまうのが、ホーカー業界の厳しい現実だ。

最後に、ホーカーに詳しい2人に「推しホーカー店舗」を1~3位でランク付けしてもらった。
苦渋の選択で選んだという各3店舗。
ジョイントホーカーのページとコメント付きで掲載する。
読者の新たなお気に入りは見つかるだろうか。




◇ホーカーの歴史

シンガポール政府観光局によると、ホーカー文化の歴史は19世紀中期までさかのぼることができる。
当時は移動屋台で食べ物を売る形式だったが、1968年から政府が営業許可を出すようになった。
1971年から移動屋台を集めてホーカーセンターを作り、21年時点では全国に110カ所以上のホーカーセンターやフードコートが存在している。
大規模なところでは250店舗を超える屋台が集結している。



(時事通信社 シンガポール支局)







※2023年11月7日にアップデートされた情報です。


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