#parti editor's travel

【パルティ編集部の個人旅行】
バングラデュ・ダッカ Dhaka,Bangladesh

生命の賛歌が溢れる緑の大地
音楽が生まれる瞬間を求めて

たま~に連載。旅人編集Nです。
2013年夏旅の旅行先として、バングラデシュを選んだ。かなりマニアックな国を選んだ。そのときの旅行記をご紹介します。
下記写真は、ダッカの高層ビル。レトロな佇まいになんとも情緒がある……



ダッカの大河に浮かぶ100年前の外輪船。川くだりでの国内旅行もできる。



建築家ルイス・カーンが建てた国会議事堂。光が様々な表情を作り出す。





ベンガルが生んだ吟遊詩人に出会う

バウルはやおら体を起こし、澄んだ声を発した。
6世紀に渡り口伝えされてきた詩がハルモニウムの旋律に乗り、タブラのリズムで踊り出す。詩人タゴールが暮らした町、クシュティアのはずれで、天に向かって歌う人々が目の前にいる。「私たちは確かにこの人たちに会いに来たのだ」という想いが満ちる。

「バウルと呼ばれる吟遊詩人に会いたい」という、民族音楽マニアの夫の呟きから始まったこの旅。ダッカからポンコツバスで6時間、伝説的な詩人、ラロン・シャハが眠り、バウルの聖地となっている寺院を目指してきた。19世紀末に建てられた、尖塔の形とレンガの彫刻が美しい「ゴヴィンダ寺院」。



だが、たどり着いて見ればたくさんの老若男女が石床で昼寝していて、誰がバウルか分からない。寺院の管理人に尋ねると、一人の”実はマエストロ”を起こしてくれた。クシュティアや周辺の村で、演奏のお礼として受け取るお金で暮らしているというバウル。いでたちは質素だけれど、管理人の接し方から、村人や音楽家たちから僧侶のように敬われていることが伝わってきた。



バウルが手にしているのは一弦の楽器「エクタラ」。ベンガル語で歌われる詩の意味は正確には分からないけれど、バウルたちが作り出す音の渦は、生きものになって胸に吸い込まれる。それはきっと、自分が今、この音楽を生んだ風土にすっぽりと包まれているからだ。



伝統的な刺繍「ノクシカタ」。パウル・クレーみたいな自由な線に魅了!



ありふれた優しさに身を任せて

「インドみたいな国かな」という想像をいい意味で裏切り、バングラデシュの旅は快適だった。車体は時代モノばかりだけれど、列車もバスも きっかり時間通りに出発するし、現地の人たちとの道中はのんびりと心地よい。水が豊かなバングラデシュ。風景を眺めるだけで心が和む。



至るところにたわわに実っていたパンの実。



道端で立ち止まると、どこでも3〜6人の人々がわさわさと寄り集まって来る。学校の子どもたち。鮮やかなブルーの制服がかわいい!



人力で動く木製の観覧車。タゴールの家の隣にあった。



頼みもしないうちから、英語ができないリキシャワーラーに行き先を伝えてくれた。まれに運賃をふっかけようとする運転手がいたら牽制するし、「もっとまけて」と退かない私に「もう無理よ。それが相場だから」と声をかけたおばちゃんもいた。リキシャーは色とりどりで、ドライバーの個性が光る。



そういえばバングラデシュは、シンガポールみたいな面積が小さい国を除けば世界一の人口密度だったっけ。灼熱の太陽の下、ダッカの渋滞に足止めされるのは正直疲れる。だけど、後ろのバスが前のバスを牛みたいに「ガンッ」と突いて煽るのは、愛嬌がある。人同士のコミュニケーションが気負わず開かれている世界、他者への善意が忘れられていない世界は温かで、”人「交」密度ナンバーワン”の方がしっくりく る。



ダール豆の揚げ物が絶品だったチャー屋のおじさん。いい顔してる。
旅の終わりはダッカに戻り、夕暮れの週末に繰り出す。絶え間なく動き続ける人の流れに身を任せれば、どこまでも行けるような気がした。



旅先スイーツ

濃厚なチーズプリン「ドイ」は、メジャーなデザート。



氷の固まりで練乳やフルーツを冷やしながら食べる「ファルーダ」は美味!



壷で冷やしたアイスを葉っぱで食べる。なんだか懐かしい気分に。



アイスは、頭の上で作ってますが何か?





旅の予算

航空券(シンガポール-ダッカ往復/シンガポール航空)S$694(税込み)
ホテル7泊 240USD程度
※2013年6月15日出発



編集Nの旅メモ

①イスラム色の強いバングラデシュでは、日本人女子が一人歩きするとかなり視線を感じる。数人で行くか、男の子と一緒の方が断然旅行しやすい。
②ダッカは埃っぽいので、朝夕、うがい薬の使用がオススメ。③地方ではホテルと名のつく施設でもお湯が出ないことが多いので、田舎へ行く時はバックパッカー魂で出かけよう。


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