#parti editor's travel

【パルティ編集部の個人旅行】
日本・香川県男木島 Ogijima-Kagawa,Japan

猫とアートの島、男木島へ

たま~に連載。旅人編集Uです。
ぽっかりと時間の空いた8月、久しぶりに日本で夏休みを迎えた。
真夏の日本に帰るのは実に10年ぶり。蒸し暑さに不安を覚えつつも、花火にお祭りにビアガーデンと“日本の夏”への期待は膨らむばかり。海にも行きたいし、たまには日 本を旅行したいよね、とレンタカーを借り、なにはともあれ四国を目指すことに。そのときの旅行記です。



10年ぶりの日本の夏

夕刻に東京を出発し、朝日が昇る頃には四国へと渡る「しまなみ海道」の始点、尾道に到着した。

そこから先は地図やネット情報とにらめっこして目的地を決める、究極のぶらり旅。この島ではタコ飯が名物らしいと高速を降り、海を望む露天風呂があれば立ち寄って汗を流し、透明度の高い海を求めて高知の先端まで車を走らせた。

車窓からの眺めは、どこまでも青い空と海。
まるで絵に描いたように“山らしい”山々の麓には田んぼが黄金色に輝き、キャンプ場で夜を明かす頭上には満点の星空が。豊かな日本の自然に抱かれて目を閉じると、なぜか「ただいま」と呟きたくなった。



瀬戸内に浮かぶ小さな島

男木島に行こう!と決めたのは、讃岐のうどん屋を3軒ハシゴした午後のこと。
運転を続けるには満腹すぎると「猫」「四国」でググった結果、高松港からフェリーで40分の男木島に辿り着いた。



島に船が到着!惚れ惚れするような美しいフォルムの小さな島である。高松~女木島(鬼ヶ島)~男木島を巡るフェリーは1日6往復。



スペイン人アーティストによる作品「男木島の魂」は港の待合室となっている。



男木島は人口200人弱の過疎化が進む小さな島。港の正面にある大鳥居。急斜面に張り付くような集落の入り口となる。



車も通れぬ細い斜面の坂道を、島のおばあちゃんがオンバ(乳母車)を押しながら野良仕事へと向かう。



この島の必需品であるオンバは、よく見ればとてもカラフル。これは付近一帯の島でアートを通じた誘客を行う「ART SETOUCHI」の一環 で、装飾を施したオンバを日常生活に使ってもらうというプロジェクトが行われているのだ。オンバを修理してアート作品に仕上げる「オンバ・ファクトリー」も。



また古民家を利用したオンバカフェも素敵。



他にも、民家の壁面をペイントする「路地壁画プロジェクト」は、島の各地で見られる。



冬の強風に備えた石垣に、船板で仕上げた独特な壁も。



島のいたるところに溶け込んでいる作品を探して、迷路のような細道を登ったり降りたり、ぐるぐると島を探検。瀬戸内海を一望できる豊玉姫神社は、島一番のビュースポット。



すっかり猫のことは忘れてかけていた頃、漁港のそばの家からわらわらとヤツラが現れた。思い思いにくつろぐ島猫たち。



猫の集会所に繋がる曲がり角には、まるで目印のように猫が寝そべっていた。



まるでアートの一部かなにかのようなその登場に、思わずニヤリと笑ってしまう。猫目当ての観光客はそれほどいない。



正直に言えば、遠路はるばる会いに行くほどの“猫島”感はなかった。むしろシンガポールのセントジョンズ島の方が猫の数も多いし人懐こく、“猫島”に相応しいかもしれない。



だけど、魅力溢れるこの島に来ることができたのは、島猫たちが導いてくれたおかげだ。すり寄ってきた一匹に「ありがとね」と声をかけると、そっぽを向きながら小さくにゃぁと鳴いた。



訪れる人、帰る人、留まる人

男木島を出る最後の船は午後5時に出発する。
老夫婦が営む港の店で、その到着を待ちながらちびりちびり、ビールで喉を潤す。店のおじいちゃんが今さっき海で採ってきたサザエが、いい頃合いに焼きあがる。目の前の海で採れたてのサザエを頂く贅沢。



おばあちゃんが顔見知りらしき若い女性を呼び止めて「もう行くん?これ船で食べまい」と、タコの天ぷらとサザエ飯を手渡していた。島民の過半数が70歳以上のこの島にも、お盆休みには若者が戻ってきていたのだろう。何気ない会話に島の暮らしが思い起こされ、そろそろ旅を終えオウチに帰ろうかと、郷愁を掻き立てられる。船の到着する汽笛が、夏の終わりを知らせるかのように響き渡った。



地元の人にジャクソンと呼ばれていた猫。本土に思いを馳せているのだろうか……



旅の予算

フェリー(高松港~男木島往復) 1,020円
焼きサザエ 350円
サザエ飯 350円
缶ビール 350円×2



番外編:四国ごはん

●讃岐うどん@讃岐
ぴかぴかと美しく光る讃岐うどん。



●ウツボの唐揚げ@高知
グニっとした新食感が美味!



●さつま@宇和島
鮮魚を磨って麦味噌を加えた冷汁風ご飯が名物。



鰹のカルパッチョ@宿毛
炙らない鰹がこれほど旨いとは!



タコ飯定食@生口島
瀬戸内海の地ダコを食べ尽くす。




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